羽田浩司殺人事件

羽田浩司殺人事件 (はねだこうじさつじんじけん) は、『名探偵コナン』内で、17年前に発生した事件。「天才棋士」と呼ばれた羽田浩司四冠 (当時) と、彼の大ファンであったアマンダ・ヒューズが、同じホテル内で死亡した。

概要

物語開始から17年前に発生した事件。

当時、将棋の四冠王で、七冠王に最も近いと期待されていた羽田浩司は、趣味にしていたチェスの大会に出場するために、大会前夜にアメリカのJuke Hotelに宿泊していた。同日、同じホテルの別室にいたアメリカの資産家アマンダ・ヒューズは、浩司の大ファンで、彼との直接の交流があった。

だが、浩司とアマンダは、ホテル内で何者かに殺害された。アマンダが雇い入れたボディーガードの浅香が、その日以来姿を消しているため、最重要容疑者として行方を追われている。

また、この事件に関わっていた赤井務武も死亡したとされているが、遺体は発見されていない。

この事件には、黒の組織のメンバーであるラムが関わっている。

簡易まとめ

事件 - 殺人

場所: Juke Hotel (アメリカ)

事件発生時: 17年前

被害者: 羽田浩司、アマンダ・ヒューズ

容疑者: ラム、浅香

時系列

17年前

• 羽田浩司四冠 (当時) が渡米し、Juke Hotelに宿泊。
• 浩司とアマンダ・ヒューズが、Juke Hotelで殺害される。
• アマンダのボディーガードの浅香が行方をくらます。
• (時期不明) 事件関係者の赤井務武が妻のメアリーにメールを残し、行方をくらます。
• (務武失踪後) 務武の長男である赤井秀一が、事件を追うために渡米。

10年前

• 秀一が母のメアリーと日本で再会し、事件捜査のために連邦捜査局に入ることを伝える。

9-10年前

• 務武の次男である世良秀吉が、羽田に改姓し、浩司の義弟となる。

現在

• 江戸川コナン (工藤新一) と沖矢昴 (秀一) が、浩司の残したダイイングメッセージに気づく。
• 浅香が女であるという情報を入手した堀田凱人が、東都TVディレクターの古栗三平に殺害される。
• ミュージシャンの波土禄道の新曲が「ASACA」だという情報を知った黒の組織が、バーボン (降谷零) を波土のライブ会場に向かわせる。

関連する人物

事件に直接関与した人物

羽田 浩司 (はねだ こうじ)

事件の被害者。将棋の四冠王だったが、チェスも趣味にしていた。直接の死因は不明とされているが、灰原哀が知るAPTX4869の殺害者一覧には、「工藤新一 不明」の2つ下に「羽田浩司 死亡」と記載されている。

棋士の羽田秀吉名人は義弟。

アマンダ・ヒューズ (Amanda Hughes)

事件の被害者。享年は80歳以上。アメリカの資産家で、連邦捜査局 (FBI) や中央情報局 (CIA) にも顔が利く人物だった。浩司の大ファンで、直接の交流もあり、事件当時は彼と同じホテルに宿泊していた。

浅香 (あさか)

ヒューズが雇い入れた、正体不明のボディーガード。雇われた経緯を知る者はいない。事件以来姿を消しているため、最重要容疑者として行方を追われている。堀田凱人が入手した情報によれば、性別は女。

ラム (Rum)

黒の組織のボスの側近。組織のメンバーのジンは、この事件を「ラムが抜かった仕事 (ころし)」と言っている。

赤井 務武 (あかい つとむ)

息子の秀一は、務武が事件に直接関わっていたと江戸川コナンに教えるが、どのような形でかは伏せた。

事件に興味を持つ人物

赤井 秀一 (あかい しゅういち)

務武の息子。この事件の真相を解き明かすために、FBI捜査官となった。

メアリー 世良 (メアリー せら / Mary Sera)

務武の妻。毛利小五郎が浩司の名を出した際に、異様な反応を示していた。しかし、堀田凱人が入手した、浅香が女だという情報には、興味を持たなかった。

世良 真純 (せら ますみ)

務武の娘。小五郎が浩司の名を出した際に、メアリーと同じく異様な反応を示していた。

浩司の遺体を回想する黒田 (File 987)。

黒田 兵衛 (くろだ ひょうえ)

警視庁刑事部捜査一課管理官。事件の情報をパソコンで閲覧しながら、若狭留美がゴルファーを撃退した事件と照らし合わせていた。また、インターネットには掲載されていない浩司の遺体も回想していた。

堀田 凱人 (ほった がいと)

「霊魂探偵」を名乗っていた男。死人の霊を呼び出し、親しい人しか知らないことを言い当てるとされてきたが、事前の調査によるものだと判明し、しばらくTVには出演していなかった。浅香が女だという情報を摑んだため、小五郎との番組で、浩司の霊を呼び出したといって「女に殺される」と叫ぶ予定だったが、撮影前に東都TVディレクターの古栗三平に殺害された。

現場の状況

何者かがインターネット上に定期的に上げている資料によると、浩司の部屋は荒らされており、腕に数カ所の防御創が残っていて、右手にハサミを握りしめていたことから、抵抗したことが分かっている。また、ドアノブ、ソファー、ティーカップ、皿、フォークなどにヒューズの指紋が付着していた。部屋には、ホテルの名前が入った皿やカップの破片が散乱していた。その中にはP T ONの文字が入った鏡もあった。灰原哀は、姉の宮野明美が母宮野エレーナの形見として持っていた、PUT ON MASCARAと書かれた手鏡と同じだと見ている。

赤井秀一が持っている情報では、脱衣所の水道の蛇口が開いたままになっていた。

江戸川コナンと秀一は、浩司が死に際にハサミで鏡の文字を切り落としたと推理し、"PUT ON MASCARA" から "PTON" を除いた文字の "U MASCARA" は、並び替えた"ASACA RUM" を意味していると考えていた。

ところがその後、工藤優作が自宅で秀一と話し、浩司の暗号は "ASACA" "RUM" の2つに分けるのではなく、"CARASUMA" つまり烏丸蓮耶を意味しているのだという結論に至る。

殺害方法

死因は不明とされているが、黒の組織が管理しているAPTX4869の投与者一覧には、工藤新一の名前の2つ下に「羽田浩司 死亡」と書かれている。

真相

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警察庁警備局警備企画課 (公安警察) の黒田兵衛 (当時33歳) は、上司の命令を受け、資産家のアマンダ・ヒューズ (当時81歳) と会うために、友人を誘ってアメリカのチェス大会観戦に来ていた。大会には、将棋四冠王の羽田浩司 (当時28歳) が、趣味として参加していた。黒田と友人が宿泊先のジュークホテルへ行くと、アマンダがボディガードのレイチェル・浅香 (当時20歳) を帯同して歩いていた。浅香は、日本人にしては大柄な黒田のことが気になり、他のボディガードにマークさせるかアマンダに尋ねたが、アマンダは気にする様子もなかった。

浩司の大ファンであったアマンダは、彼の部屋でチェスをする約束をしていた。アマンダはチェスをしながら、浅香の父が自分の盾となって命を落としたことや、浅香がアマンダのボディガードになりたいと懇願したこと、浅香を娘のように育てて父のような能力が身についたことを浩司に話した。彼にとって浅香は好みの女性のようであった。

同じ頃、黒の組織のラム (脇田兼則) は、ハッキングした館内の画像を見て、アマンダが配置していた信頼できるボディガード10数人の元へ部下を送り、気絶させていた。アマンダの部屋に戻り、他のボディガードの誰とも連絡がつかなくなった浅香が心配の声を上げると、アマンダは浩司の部屋にナイトの駒を忘れたと言って浅香に取りに行かせた。アマンダが1人になると、ラムが大勢の部下を連れて部屋へやって来た。アマンダは、約50年前 (=現在から約67年前) に、日本の大富豪である烏丸蓮耶の誕生パーティーに参加し、そのときに子供だったラムの姿を見ていた。

ラムの左眼は「フォトグラフィックメモリー」で、1度瞳に焼き付けたものを忘れない性質を持っていた。アマンダは、ラムがその能力を使って政財界の大物を操り組織を大きくしていることや、そのバックに烏丸がいることを察した。彼女はSWATに通報をしていたが、組織の新メンバー (ベルモット) がアマンダの声で連邦捜査局 (FBI) 長官に電話をかけ直し、勘違いだったと話していた。自分の弱みを見つけたのかと問うアマンダに、ラムは浅香のことを話し、組織が開発した毒薬・APTX4869を取り出した。浅香を脅迫するためのものであったが、アマンダはラムの指先に噛みつき、自ら薬を飲んで死亡した。しばらくして、彼女の遺体はホテルのスタッフと黒田によって発見された。アマンダは、ナイトの駒と腕時計を使ってダイイング・メッセージらしきものを残していた。

一方、浩司は、部屋を訪ねた浅香に、アマンダが忘れ物をしたのは浅香を避難させるためのウソだという考えを話した。直後に訪れたラムたちを1度は追い払うが、アマンダのボディガードが何人も脅迫されたり殺害されたりしている状況から、浅香を外に出すのは危険だと判断し、抵抗されないようにスタンガンで気絶させた上で本棚の奥に隠した。その時に、お守りとして自分の持っていた角行の駒を託した。再び訪ねてきたラムが、本棚の微妙な違和感に気づいて強引に部屋に侵入したため、浩司は、ラムが約3o年前の国際経済フォーラム年次総会に、烏丸会長の代わりとして出ていたことをネットで見たと話した。その後、アマンダの遺体が発見されたため、ラムは何度も暴行を加えられても浅香の居場所を話さない浩司に口を割らせるのを諦め、APTX4869を飲ませた。犯人グループの退散後、浩司は残りの力を振り絞り、母・市代に譲り受けた「PUT ON MASCARA」と書かれた手鏡から「CARASUMA」を引いた「P T ON」の文字を残し、息を引き取った。

アマンダが浩司に会っていた可能性があると考えた黒田は、浩司の部屋を突き止め、バスルームで彼の遺体を発見した。現場の状況の違和感について黒田が考えている間に、本棚に隠れていた浅香が意識を取り戻し、黒田が浩司を殺害したと思い込んで襲いかかった。その拍子に落下した黒田の携帯電話の画面にアマンダの遺体が写っていたことに浅香は動揺し、その隙に黒田に反撃されて気絶した。現地の警察に浅香を引き渡す前に話を聞くために、黒田はトランクケースに浅香を入れて車まで運んだ。しかし、トランクケースにはGPSが付いていたため、走行中に車を特定されてしまった。そして、交差点内で飲酒運転の信号無視のトラックに衝突され、黒田は救急車に運ばれ、その後10年間意識不明で警察病院に入院することとなった。浅香は救急車の到着前に逃走していた。組織員は、ラムの判断で、大騒ぎになった事故現場から撤収することとした。

APTX4869で死亡した場合、その痕跡は体内に残らないため、アマンダと浩司は共に死因不明となった。浩司の父・康晴は、現地の警察も日本警察もあてにならないからと、友人の秘密情報部 (MI6/SIS) 諜報員である赤井務武に電話で調査を依頼した。イギリスに住んでいた務武はすぐに単身でアメリカに渡ったが、その後、「とんでもない奴らを敵に回した」という内容のメールを妻のメアリーに送信し、消息不明となっている。

帝丹小学校1年B組副担任の若狭留美が浅香に似ているという黒田の証言や、若狭が黒田を会うたびに睨んでいたこと、江戸川コナン・少年探偵団・沖矢昴 (赤井秀一) と海に出かけた際の若狭の様子に違和感があったことから、江戸川コナン (工藤新一) と秀一、コナンの父の工藤優作は、若狭と浅香が同一人物で、インターネット上に事件のことを定期的にアップロードして、繰り返しアクセスする人間に接近しているという結論に至っている。

関連項目

• 羽田浩司
• APTX4869